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〜 其の二 〜

誠   :おっと、まずはノックだな。

コンコン♪

男の声:おう、入れ!

中から、渋い中年男性がまるで酔っ払ったような声で返事をしてきた。誠は戸を開けた。

誠   :失礼します。えっと...
男   :お前が大神一郎か?なんだか思っていたよりはずいぶんと優男だなぁ。写真とも違うような...

男は、真っ赤な顔をして、写真と主人公を見比べながら言う。

誠   :へ?僕の名前はおおかみじゃなくて、その写真を取りに...
米田  :まあ、いいか。ほのかの奴が連れてきたのなら間違いねぇんだからなぁ。
俺の名前はこめたって言うんだ。それよりどうだ、おめぇも一杯やるか?

誠が否定するのも聞かずに米田は続ける。そして誠が、

誠   :い、いや、そうじゃなくて、俺はその、ほのかに頼まれて...
米田  :なんだぁ?俺の酒が飲めねぇってぇのかぁ?この野郎!

悪酔いしている米田に、もはや普通の言葉は通じない。誠はあきらめ、

誠   :(だめだ...完全に出来上がってる...こりゃしばらくしてから出直してきた方が良いかも)
それでは失礼しました。
米田  :あ、おいこらぁ!待ちやがれぇ!!おおかみぃ!!

既に泥酔状態の米田を放っておいて、誠は部屋を出た。

誠   :ふう、さて、これからどうしようかな

そんな誠の前に、えみるとほのかが現れる。

えみる :あ、いたいた。ダーリンだりゅん!
誠   :えみる...それにほのかも...その...もう話は終わったのかい?

誠は、ほのかの機嫌をうかがうように言う。

ほのか:ええ。えみるちゃんはあなたが北海道にに引っ越してくる前に住んでいた所での知り合いなんだってね?
誠   :あ、ああ...そうなんだ...その事を話していたの?
えみる :そうだりゅ〜ん!えみりゅんはぁ、ダーリンが、仙台にいた時に会ったんだりゅん♪

とりあえず機嫌の直ったほのかは、誠に聞く。

ほのか:ところで...もう館長には会った?
誠   :うん...会ったんだけど、すっかり酔いつぶれてて...まだ写真をもらってないんだ。
ほのか:そのことなんだけど、困った事があるの。
誠   :困った事?

誠が、不思議そうに聞き返すと、

えみる :あのねぇ、ほのかちゃんが帰って来るのがあんまりにも遅かったからぁ、もう一人の娘が迎えに行ったの。
ほのか:だけど私たちとすれ違った上に...
えみる :待ち合わせに遅れすぎちゃったから、その人いなくなっちゃったんだって。
ほのか:それで、今日の開演の時の仕事をする人がいなくなっちゃったわけなの。

二人はうつむいて、暗い表情になる。それを聞いて、誠は少し考えてから、こう言った。

誠   :そっかぁ...ねえ、もし俺が出来る事なら、代わりに手伝うよ!その人が見つかるまで。
えみる :えっ...本当!?
ほのか:やってくれるの?

二人は嬉しそうに、誠を見る。

誠   :ああ、本当ならその人を探す予定だったけど、そう言う事なら俺がやるよ。
ほのか:ありがとう。じゃあ、館長室にある服に着替えて来てくれる?
誠   :うん、でも服って...掃除か雑用か何か?
えみる:いいからいいから♪早く着替えて来るりゅん!

そして誠は背中を押され、再び館長室に入った。

誠   :失礼します。あの、今日来る予定だった人の着る服というのは何処にあるのでしょうか。
米田  :あ〜ん?おお、大神かぁ。おめぇの着る服ならほれ、そこのロッカーの中だ。

米田は、部屋の片隅にあるロッカーを指差した。

誠   :僕は大神ではありません。それよりこの服、お借りします。
米田  :あん?何寝ぼけたこといってんだ?おめぇは。今日からその服はお前のもんだよ。

ロッカーから服を取り出しながら、誠は言う。

誠   :だからそうじゃありません。それより失礼ですが、ここで着替えさせてもらいます。
外で、女性二人が待っていますので。
米田  :おお?もう二人も引っかけるとはやるじゃねぇかお前さん。好きなだけ着替えていけ。

妙に楽しそうな米田に対して、誠は質問した。

誠   :引っかけるって...ところで、この劇場に、明日香とか、夏穂という名前の女の子はいませんか?
米田  :明日香に夏穂だぁ?ここにはいねぇなあ。なんだおめぇ浮気もんか?この色男め。

誠は一瞬核心をつかれたような表情をしたが、あせって否定した。

誠   :いえ!ただの知り合いです...あ、着替え終わりましたので、これで失礼します。
米田  :おう!それじゃあモギリの仕事、がんばれよ!
誠   :(何を言っているんだ?あの人は。)

誠はわけのわからぬ顔をして、、館長室を出た。

ほのか:あ、出てきた。
えみる :わぁ〜、ダーリンかっこいい〜
誠   :そ、そうかな?

えみるにほめられ、照れてる誠の手を引っ張ってほのかが言った

ほのか:さ、仕事をする場所にいきましょ。案内するわ。
誠   :う、うん...

それを見てえみるが、

えみる :あ〜、ほのかちゃんずる〜い。ダーリンはえみりゅんが案内するんだりゅん!
ほのか:えみるちゃんは台本の最終チェックでもしてて。東條君は私が案内するの!
えみる :えみりゅんが案内するりゅん!ほのかちゃんは衣装合わせでもしていて!
ほのか:じゃあ、彼に決めてもらいましょうよ!
えみる :ダーリンに決めてもらうりゅん!
ほのか&えみる:どっちに案内してもらいたいの?

二人の気迫に押されて、誠はたじろいだ。

誠   :(こりゃどっちを選んでも大変な事になりそうだな...ここは一つ...)
誠   :あ、あのさ、二人とも忙しそうだから俺一人でいいよ。だから場所だけ教えてくれる?
ほのか:...そう言われてみればそうね...じゃ、パンフレット出してくれる?

すでに持っていないパンフレットを要求され、誠は困った顔をした。
なぜならさっき若菜を助けるために、丸めてゴキブリを潰してしまったからだ。

誠   :あ、そういえばパンフレットは...その、なくしちゃったんだ。
えみる :やっぱりえみりゅんが案内するりゅん♪
ほのか:私たちは忙しいのよ?えみるちゃん!

三人がもめている所に真奈美が二人を探しに来た。

真奈美:二人ともどうしたんですか?早く準備しないと開演に間に合いませんよ!
ほのか:真奈美ちゃん!?ちょうど良かった。あなたはもう準備は終わったの?
真奈美:はい。あなたたち二人を除いては、ほとんどみんな終わりました。

それを聞いて、ほのかは安心して言う。

ほのか:だったらこの人を玄関の受け付けに案内してくれる?今日来る人の代わりなの。
真奈美:あ、はい。わかりました...
えみる :それじゃあ、よろしくお願いね〜

二人は走って行ってしまった。そこに取り残された二人は顔を合わせた。

誠   :あ、真奈美...
真奈美:え?あ、あなたが大神さんの代わりなんですか?
誠   :どうもそうみたいなんだ...それで、案内頼める?
真奈美:はい。私なんかでよければ...こちらです。

二人は、一階ロビーの方へと歩いて行った。途中、誠は食堂を覗いたが、若菜の姿はすでになかった。玄関に到着すると、

真奈美:ここです。あなたはこの受け付けの所で、お客さんの切符を切って下さい。
それじゃあ私は最後の打ち合わせがあるので、これで失礼します。
誠   :あ、待って!
真奈美:え?

またもや立ち去ろうとする真奈美を誠が呼び止めて言う。

誠   :その、ありがとう。案内してくれて。それから、さっきはごめん。
真奈美がいたもんだから、つい驚いてしまって。
真奈美:私の方こそすみません。急に逃げちゃったりして...
東條さんがここに来るなんて思いもしなかったから...

二人とも少し照れて、黙っていたが、誠は真奈美に激励の言葉を送った。

誠   :それじゃあ、頑張ってね!
真奈美:はい、あなたも頑張って下さい。

そして真奈美は頭を下げて、去って行った。一人残された誠は、受け付けのテーブルの上にある物を見る。
確かに切符を切るためのハサミが置いてある。

誠   :はあ、館長さんが言ってたモギリって言うのはこの事か、取り合えず言ったからにはやるか。
それにこの劇場の事も調べないと。ここは一体何処なのか、真奈美達がいつからいるのか、お客さん達にでも聞いてみるか。



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