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〜 其の三 〜

時計がちょうど一時をまわった頃、お客さんが入ってきた。

客1  :お兄さん!切符切ってちょうだい!

考え事をしていた誠に向かって、客が声をかけてきた。

誠   :は、はい!ただいま。

誠は慌てて返事をする。そこに別の男性客が現れて、切符を差し出しながら、

客2  :ねえねえ、お兄さん新しいバイト?あのさあ、ここの劇団の若菜ちゃんって知ってる?

突然の質問に、一瞬戸惑うう誠。

誠   :へ?あ、はい。知ってますけど...
客2  :おれさあ、あの娘のファンなんだけど、彼女いいよねぇ〜。
お嬢様!って感じで、今時いないよね〜あーゆう娘は。
誠   :まあ、確かに言われてみれば...

切符を切りながら、誠がうなずくと、男は突然手紙を取り出して、誠に言った。

客2  :それであんたを男と見込んでたのみがあるんだ。この手紙、チャンスがあったらでいいんだ。
若菜ちゃんに渡してくれないか?ファンの男からって。

そう言って、男性客は手紙を強引に主人公に託すと、さっさとホールの方へと向かってしまった。

誠   :え、ちょ、ちょっと、あ、待って下さ...って、行っちゃった...どうしようこの手紙...

考えてる暇もなく、客は容赦なく誠に声をかけて来る。今度は生意気そうな子供だ。

子供  :ちょっと!そこの兄ちゃん!何ボーっとつっ立ってんだよ。早く切符切れ!
誠   :(なんだこのガキは?むかつくなぁ、殴ってやろうか!?)

腹が立つのを我慢して対応する誠の不機嫌そうな顔をみて、子供は言う。

子供  :なんだよその顔は?客に手を上げる気か?
誠   :(くっ、なんてむかつくガキなんだ。
しかしここでこいつを殴るわけにはいかない。我慢せねば)

誠はこみ上げて来る怒りを押さえて、切符を切り続けていた。
すると、そこに、一人の男が駆け込んできて、誠にこう聞いた。

男   :すみません!ここの責任者の部屋は何処ですか!?

その男は、このような場所の客はに不釣り合いな、変わった衣服を着ている。
しかも、かなり急いできたらしく、息切れを起こしていた。
誠は驚きながらも、取り合えず館長質の位置を説明した。

誠   :えっ...あ、館長室ならそこの道を真っ直ぐ行って突き当たりを右に行くと、左手の方にあります。
男   :ありがとう!それじゃっ!

男はそのまま走り去った。

誠   :(何なんだったんだろう、あの人は。それに変な服来ていたし...
ここの関係者だったら館長室の位置くらい知っているだろうし...
あっ!まさか今の人ってもしかして...)

何かが判りかけた時に、その思考を遮るような声が聞こえる。

女性客:まだなの?お兄さん!
誠   :は、はい!ただいま。

再び客に煽られ、誠は切符を切っていた。
モギリが一段落つくと、さっきの男がとても悲しそうな顔をして戻ってきたのを誠は見つけた。
誠はその男に声をかけた。

誠   :あなた大神さんでしょう?

男は、急に名前を呼ばれたのに反応して、うつむいていた顔を上げて返事をした。

男   :はい、いかにも自分は大神ですが...あなたは?

今度は、彼が誠に聞き返す。

誠   :えっと、僕は、あなたの代わりにここで仕事をさせられているんです。

それを聞いた大神は、不思議そうな表情で再び聞いてくる。

大神  :では、あなたが隊長に?
誠   :え!?何のことですか?

突然変な事を言われ、誠はまたも驚く。そんな誠を見ながら、大神は続ける。

大神  :先程、米田長官からお話を伺ったんですが、
自分は定刻の十二時までにここに到着できなかったからと言われ、
米田長官に隊長任務を撤回されたのです。
それで、自分の代わりに今日来た人に隊長任務を言い渡すとかで...
本来自分は今日、迎えに来てくれる人がいたはずなのですが、
いつまで待っても現れず、仕方なく人に聞いて、ここを探してきたわけです。

何だかよくわからないが、とにかく彼が遅れて来た原因はわかった。そして、誠は混乱した。

誠   :(それってもしかしてほのかが写真を落としたから...
ってそれよりも、じゃあ俺が隊長?ちょっと待て、大体隊長って何のことだ?
さっぱり訳が分からない!こうなったら後で直接館長に聞き出さなくちゃ!)
もしかして俺のせいであなたは...?

気まずい雰囲気の中で、誠は謝ろうとした。しかし、大神は、

大神  :いえ、迎えが来るとばかり思って油断していた私が悪いんです。
きっとこれも私が隊長にむいているかどうかの、米田長官の試練だったんでしょう。
それに、私にはもう一つ当てがあるので、これで失礼いたします。

そう言って、大神は、立ち去った。その場に残された誠は、

誠   :なんて真面目な人なんだろう。まるで古い時代の軍人みたいな...
あれなら若菜といい勝負ができるんじゃないかな...それにまだ当てがあるって...
何だろう?あの人がああなったのも俺のせいでもあるようなもんだから気になるな...
取り合えず館長の所に行くか。

などと考えながら、館長室を目指した。



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